恩田陸「図書室の海」読了。


短編ならではの瞬間最大風速の切り取りがとても面白かったです。
短編の良いところは、
長編では使うことの出来ない雰囲気だけの書き飛ばしだったり、
叙述トリックに近いものであったり、
良い意味での『・・・な〜んちゃって。』だと思うのですが、
それがアノ手コノ手で用意されて大変満足でした。


私は職業としての作家さんが書いたものが好きなんです。
仕事として高い技術を使って手を抜かずに書かれたものは美しい。
豆腐屋さんが、一丁百数十円の豆腐のために
毎日毎日手を抜かずに美味しく作るのと同じですよ。
作家という職業は、自分の魂を削りやすい仕事だからこそ、
削らずに面白いものを書き続けられる体制を作った作家さんを尊敬します。
まあ、命を賭して書かれた物は、
こちらも相応の覚悟で読まねばならないので、
量がこなせないってのもあるのですが。(笑)


恩田陸は職業としての作家だなと思う。
作家としての技術力に酔いしれた短編集でした。
暫く恩田を続ける予定。