伊坂幸太郎「終末のフール」読了。


あと三年後に小惑星が落ちてきて地球が終わる。
そんな世界の中でどうやって生きたいのだろう・・・という短編集。


登場人物達の多数が、大切な人を暴徒化した民衆に殺されており、
そうでなければ、世を儚んで自殺していたりする。
環境としては絶望に溢れている。でもそこは伊坂らしく。
ウェットさはあまりなく、何故か小さな希望が見えます。


伊坂が見ている人間像は面白いと思う。
ココぞとばかりに人の脆さを書き出すかと思えば
生きたいと思う人のありように希望を見出している。
伊坂の書く悪人は、本当に笑っちゃうくらい悪人で好きです。
"こんな事やってるけど実は彼も辛いんダヨー"なんて事ないもんなあ。
良き人々も、結構したたかに生きていて良い。
"したたか"って"強か"って書くんだよね〜。
ニュアンスとしてはコズルイ感じがあるけど、私はこの言葉が好きだ。


一番好きな短編は「天体のヨール」。
え?ヨールってそれ?あり?ねえ、ありなの?(笑)
とは言え、私は二ノ宮みたいな人に親近感を覚えます。
きっと私も、そういう状況になったら天体望遠鏡を買うだろうなあ。
そんでもって、向かってくる小惑星を見て、
感動に近い感情を抱くんだろうなあと思います。
それはそれで緩やかな自殺のようでアレですが・・・。
だとしても、世界の終わり(=死)を受け入れることと、
生きる事を諦めることは大きく大きく違うのだと思うのですよ。